なぜボラティリティを見る必要があるのか

デイトレやスイングで「+10円で利確する」というルールを決めたとします。このとき、銘柄によって達成までの日数がまったく違います

1日の値動き幅+10円に届くまで判定
10円1〜2日◎ 狙える
5円2〜3日○ 現実的
2円1週間以上△ 資金が寝る
0.5円1ヶ月以上✗ 論外

値動きの小さい銘柄を選ぶと、目標に届かないまま資金が何週間も拘束されます。トレード回数が減れば、当然チャンスも減ります。「利確目標を下げれば解決する」と思いがちですが、目標を+5円に下げても、1日0.5円しか動かない銘柄なら10日かかります。下げても解決しません。

⚠️ 問題は「目標値」ではなく「銘柄選び」
利確目標が届かないとき、多くの人は目標を下げようとします。しかし本当の原因は値動きの小さい銘柄を選んでいることです。目標を下げると1回の利益が小さくなり、損切り1回で複数回分の利益が消える構造になります(詳しくは損益比率(RR比)とは)。

方法1:過去60日ボラティリティ(HV)を円に換算する

証券会社のスクリーニング機能や銘柄詳細画面に「過去60日ボラティリティ」という項目があります。ヒストリカル・ボラティリティ(HV)と呼ばれ、過去60日間の値動きの荒さを1つの%で表した数字です。

ただしHVは通常年率で表示されるため、そのままでは「1日何円動くか」が分かりません。次の式で換算します。

1日の値動き幅(円)≒ 株価 × HV% ÷ 16
16は「1年の営業日約250日の平方根(√250 ≒ 15.8)」です。年率を1日あたりに直すために使います。

計算例

1
株価230円・HV 80%の銘柄
230 × 0.80 ÷ 16 = 約11.5円
→ 1日に約11.5円動くので、+10円は1日で届く可能性が高い
2
株価230円・HV 30%の銘柄
230 × 0.30 ÷ 16 = 約4.3円
→ 1日4.3円なので、+10円には数日かかる
3
株価1,000円・HV 25%の銘柄
1,000 × 0.25 ÷ 16 = 約15.6円
→ 株価が高いとHVが低くても値幅は大きくなる

一般的なHVの水準

自分が見ている銘柄が荒いのか穏やかなのか、比較の目安です。

銘柄の性格HVの目安
日経平均約20%
大型株(トヨタなど)20〜30%
小型株・新興株40〜60%
材料株・急騰銘柄80〜150%
💡 スクリーニングの足切りに使える
HVは%表示なので株価が違う銘柄同士を直接比較できます。スクリーニング機能で「ボラティリティ 下限◯%」と設定すれば、値動きの小さい銘柄をまとめて除外できます。株価100〜400円の低位株を狙う場合、HV 70%程度を下限にすると+10円が狙える銘柄だけが残ります。

方法2:ボリンジャーバンドの±2σの幅で読む

もう1つはボリンジャーバンドをチャートに表示して、帯の幅を目で読む方法です。

ボリンジャーバンドは移動平均線の上下に「株価がだいたい収まる範囲」を描いた指標で、±1σに約68%、±2σに約95%の確率で株価が収まります。この帯の幅がそのまま「この銘柄が動く範囲」を表します。

±2σの帯の幅意味+10円の狙いやすさ
40円よく動く◎ 日常的な値幅
20円そこそこ動く○ 狙える
8円ほぼ動かない✗ 10円は稀な大変動

見方の手順

1
日足チャートにボリンジャーバンドを表示(期間は25日が標準。証券会社のデフォルトのままでOK)
2
上の線(+2σ)と下の線(−2σ)の株価を読む
3
引き算する。例:+2σが250円・−2σが210円なら帯の幅は40円。この銘柄なら10円の値動きは日常的
💡 数値で見たいなら「標準偏差」
指標一覧に「標準偏差」があれば、それがσそのものを数値で出してくれます。σ × 4 = ±2σの幅なので、σが10円なら帯は40円と即座に分かります。チャートから目視で読むより速いです。

2つの使い分け

HVとボリンジャーバンドは似ているようで、見ているものが違います。

項目HV(過去60日)ボリンジャーバンド
計算元日々の変化率のばらつき(60日)終値が移動平均線からどれだけ離れているか(25日)
見えるもの銘柄の性格(数字1個・安定)今の状態(帯・リアルタイム)
単位%(要換算)円(そのまま使える)
銘柄間の比較◎ しやすい△ 株価帯が違うと比較しにくい
エントリー判断✗ できない◎ できる

✅ 結論:両方を段階的に使う

銘柄を探す段階 → HV
候補を%で比較して、値動きの小さい銘柄をまとめて足切りする。

買う直前 → ボリンジャーバンド
今の±2σが何円か、帯が狭まっていないかを確認する。

ボリンジャーバンドにはスクイーズ(帯が狭まる=大きな動きの前兆)とバンドウォーク(帯に沿って動き続ける=トレンド発生)というサインもあります。HVは数字1個なのでこうしたタイミングは読めません。詳しくはボリンジャーバンドの見方で解説しています。

ATRという指標について

ボラティリティの指標としてATR(Average True Range/真の値幅の平均)もよく紹介されます。前日終値も考慮して、1日にだいたい何円動くかを直接数値で出してくれる指標です。

ただし証券会社のスマホアプリには搭載されていないことがあります。搭載されていない場合は、この記事で紹介したHVとボリンジャーバンドで代用できるので、ATRのために別のツールを入れる必要はありません。

⚠️ DMI/ADXは値幅の判定に使えない
同じくワイルダーが考案したDMI/ADXは、内部計算でATRを使っていますが、出てくるのは「トレンドの強さ」であって値幅(円)ではありません。1日1円ずつ30日間じわじわ動く銘柄でもADXは高く出ます。「何円動くか」を知りたい目的には使えません。

やりがちな間違い

❌ 過去の自分の取引から「1日あたり◯円」を逆算する

「30日持って+3円だったから、この銘柄は1日0.1円しか動かない」——これは不正確です。実際には毎日±5円の幅で上下していて、たまたま30日後に+3円の地点で売っただけかもしれません。往復の値動きが打ち消し合うため、実際のボラティリティより小さく出ます。

❌ 値動きが大きい=勝ちやすい、と考える

ボラティリティが高い銘柄は上昇も下落も速いだけです。+10円に早く届く銘柄は、−10円にも同じ速さで届きます。勝ちやすくなるわけではなく、結果が出るのが速くなるだけだと理解しておく必要があります。だからこそポジションサイズ損切りラインを先に決めておくことが重要になります。

❌ ボラティリティだけで銘柄を絞る

HVが高い銘柄には「材料が出て急騰した優良銘柄」だけでなく「取引が薄いせいで値が飛んでいるだけの銘柄」も混ざります。後者は板がスカスカなので、指値が約定しない・想定より大幅に不利な価格で約定するといった問題が起きます。出来高や売買代金のフィルタと必ず併用してください(目安は出来高500万株以上。詳しくはデイトレ銘柄の選び方)。

関連ツール
ポジションサイズ計算ツール
値動きの大きい銘柄ほど、株数を先に計算しておくことが重要になります

まとめ

  • 利確目標が届くかどうかは銘柄の値動きの大きさで決まる。目標値を下げても解決しない。
  • HV(過去60日ボラティリティ)株価 × HV% ÷ 16 で1日の値動き幅(円)に換算できる。
  • ボリンジャーバンドの±2σの幅は、そのまま円で読める。幅20円以上が目安。
  • 使い分けは「銘柄を探す=HV」「買う直前=ボリンジャーバンド」
  • ATRは同じ目的の指標だが、アプリに非搭載の場合は上記2つで代用できる。DMI/ADXは値幅が出ないので使えない。
  • 値動きが大きい=勝ちやすい、ではない。結果が出るのが速くなるだけ。出来高フィルタとリスク管理を併用する。