株のテクニカル分析はFXで使えるか|板・出来高が無い分の読み替え方

結論:入る場所より「入る前に決めること」

先に結論を書きます。

この記事の要点

①エントリーの精度を上げても損益はほとんど動かない。78トレードのうち損失の全額は5回から出ていて、その5回に共通していたのは「エントリーが下手だったこと」ではなく逆指値を置いていなかったことでした。

②実データで残った条件は、場所ではなく時間帯だった。22〜24時に入って0時までに閉じた28回だけが勝率85.7%・+3,358円。それ以外の50回は勝率52.0%・-14,476円です。

③入る前に決める順番は、損切り→通貨数→利確。この順で決めると、ロットが自動的に決まります。逆にエントリー価格から考え始めると、必ずロットが大きくなります。

「エントリーポイントの見つけ方」を期待して来た方には、拍子抜けする結論かもしれません。ただ、実際に自分の取引記録を数えてみると、こうなりました。順番に見ていきます。

実データ:唯一プラスだった時間帯

FX実践記録②で、累計78トレードを時間帯別に集計しました。1つだけ明確にプラスの領域があります。

区分件数勝率合計
22〜24時に入り0時までに閉じた28回85.7%+3,358円
それ以外50回52.0%-14,476円

内訳は7月+838円・8月+2,520円で、両月ともプラスでした。逆に、21時台までにエントリーした25件は勝率48%・-2,115円です。同じ手法・同じ通貨ペアでも、入る時刻を変えるだけで結果がここまで変わりました。

28件では「確定した強み」とは呼べない
サンプル数が少ないので、これは検証済みのエッジではなく「推奨の営業時間」という扱いです。同じ数字が次の100件でも出るかは分かりません。ただ、やらない時間帯を決める根拠としては十分だと考えています。プラス材料が無い時間に入る理由はないからです。

なぜ22〜24時なのか

理由ははっきりしています。参加者がいちばん多い時間だからです。

時間帯市場エントリー先としては
8:00〜15:00頃東京△ 値動きが小さくレンジになりやすい
16:00〜21:00頃ロンドン△ 方向は出始めるが、まだ試される
22:00〜24:00頃ロンドン+ニューヨーク◎ 最も流動性が高い
0:00〜6:00頃ニューヨーク✗ 判断力が落ちる時間帯

夏時間ではニューヨーク市場が22時半ごろに開き、まだ開いているロンドンと重なります。株のテクニカル分析はFXで使えるかで書いたとおり、FXには出来高がありません。「参加者が多いかどうか」を判断する材料が時計しかないので、時間帯そのものが情報になります。

株でいう寄り付きに相当するのがこの2時間です。会社員にとっては帰宅後にあたるので、都合が合うのも実務的な利点でした(時間帯ごとの癖という発想は寄り付き・引けの記事と同じです)。

どこで入るか:根拠は2つだけ

時間帯を決めたうえで、実際にどこで入るか。FXで使える根拠は、突き詰めると2つしかありません。

板が見えない以上、材料は価格だけ

株なら板を見て「どこに注文が待っているか」を確認できました。FXは店頭取引なので板が存在せず、「どこで待っているはずか」を価格から推測するしかありません。

推測の材料は、①直近の高値・安値②キリの良い数字。この2つだけです。

① 直近の高値・安値(水平線)

サポート・レジスタンスラインの引き方はFXにそのまま持ち込めます。むしろ株より効きます。世界中が同じ1本のチャートを見ているので、意識される場所が揃うからです。

② キリ番(50銭・1円刻み)

ドル円なら 157.00 157.50 158.00 といった数字に注文が集中します。ここには他人の損切り注文が溜まっていると考えて、2通りの入り方があります。

入り方考え方注意点
反発を狙うキリ番や直近安値まで落ちてきたところで買う。押し目の目安はフィボナッチの38.2%・50%・61.8%そのまま抜けたら即撤退。逆指値は節目のすぐ外側
ブレイクを狙う節目を明確に抜けたところで、抜けた方向に乗る抜けた足が確定するまで待つ。FXは騙しが頻繁
⚠️ ブレイクの騙しは株より多い
キリ番に損切りが溜まっているということは、そこを一度突いてから戻る動きが起きやすいということでもあります。株なら出来高急増でブレイクの本物さを確認できましたが、FXにはその手段がありません。抜けた足が確定するまで待つという価格ベースの確認で代用します。

移動平均線やRSI・MACDを重ねることもできますが、実践記録②ではルールを増やすのをやめました。条件を足すほど、後から「なぜ入ったのか」を検証できなくなるからです。根拠は1つか2つで足ります。

入る前に決める3つ(順番が決まっている)

ここが本題です。エントリーボタンを押す前に、3つをこの順番で決めます。

1

損切りを置く場所を決める

入る場所ではなく、間違っていたと判断する場所を先に決めます。反発狙いなら節目のすぐ外側、ブレイク狙いなら抜けた節目の内側。ここまでの距離がpipsになります。

例:エントリー157.20円 / 損切り156.95円 → 25pips

2

損切り幅から通貨数を逆算する

ロットは「いくら儲けたいか」ではなく、1で決めた幅に当たったときいくら失うかから決まります。資金5万円なら1回の損失は2%ルール1,000円まで。

25pipsで-1,000円に収まる数量は4,000通貨です。

3

利確の場所を決める

最後に利確です。損益比率(RR比)を1以上にするなら、損切りと同じか、それより遠い場所に置きます。実践記録では+25pips利確・-25pips損切りのOCO注文を使いました。

通貨数 ÷ 100 = 1pipsあたりの損益(円)
ドル円の場合。4,000通貨なら1pips=40円。25pipsの損切りで-1,000円。この暗算ができると、チャートを見ながらロットを決められます。
この順番を逆にすると必ずロットが膨らむ
「157.20円で買おう、じゃあ5,000通貨で」と数量から決めると、損切り幅が後付けになります。すると決めた金額に収めるために損切りを不自然に近づけるか、損失額の方を黙って受け入れるかのどちらかになります。どちらも、負けが偶然の大きさになるということです。
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エントリーと同時に注文を置く

3つを決めたら、エントリーと同時に決済注文まで入れます。後で入れる、ではありません。理由は実データにあります。

78トレードのうち、損失の全額を作っていたのは-30pipsを超えた5件(合計 -13,157円でした。この5件の共通点は1つだけ、逆指値を入れていなかったことです。

決済幅件数合計
+23pips以上(利確ライン到達)15回+11,551円
+0〜23pips(自分で手仕舞い)35回+6,916円
-0〜23pips(浅い負け)7回-378円
-23〜30pips(損切りライン付近)16回-16,050円
-30pips超(損切り不在)5回-13,157円

注目したいのは上から2行目までです。OCO注文で「+25pipsで利確・-25pipsで損切り」を設定した回は、勝ちの上位にぴったり+25.0pipsが9件並んでいました。設計どおりに機能していたということです。

⚠️ 15分で-60pips。手動では間に合わない
5件のうち2件は、保有15分と22分で-60pipsに達しています。寝て放置したのではなく、起きて画面を見ていたのに切れなかったトレードです。ドル円が4円規模で急落していた局面で、値動きが速すぎました。「損切りしよう」と考えているあいだに想定の2倍以上の損失になっています。

つまり「深夜は取引しない」「気をつける」といった対策では防げません。あらかじめ置いた注文だけが機能します。

この2件はどちらも23時台のエントリーです。前述の「22〜24時が良い」という時間帯ルールでも防げていません。時間帯は入る条件、逆指値は入った後の防御で、役割が別なのだと分かります。

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入ってはいけない5つの場面

エントリーの改善で効いたのは、良い場所を増やすことより入らない場面を決めることでした。

場面理由
根拠が「上がりそう」だけ後から検証できない。水平線かキリ番か、言葉にできないなら見送る
負けた直後の取り返し回数とロットが同時に上がる。7月30日の15回・-4,532円がこの形だった
重要指標の発表直前価格が一瞬で飛び、逆指値が想定価格で約定しない
0時以降の新規集計でマイナス領域。翌朝まで持つ理由がないなら入らない
仕事の合間に数十秒だけ見ていちばん質の低い判断になる。見るなら見る、見ないなら触らない
週末・指標をまたぐなら、そもそも入らない
金曜の夜と指標発表の前後は、強制ロスカットが想定どおりに機能しない可能性がある局面です。国内業者はゼロカットを提供していないので、飛んだ分は自分の負担になります。またぐ前提のエントリーは、サイズを落とすか見送るのが安全です。

日中モードと夜モード

会社にいる時間と、帰宅後にチャートを見ていられる時間ではできることが違います。そこで逆指値は共通で必須にしたまま、利確側だけを切り替える形にしました。

日中モード(会社にいる時)夜モード(22〜24時)
逆指値-1,000円(必須)-1,000円(必須)
利確+25pipsの指値も同時に入れて完全放置裁量(自分のタイミングで決済)
アプリ見ない見ていて良い
期限どちらかが約定するまで0時までに必ず閉じる

日中は「見られない」のではなく見てはいけない時間として扱います。そもそも日中は成績が悪い時間帯だったので、「日中はやらない」という選択も十分あります

裁量利確には数字上の懸念がある(承知の上で採用)
勝ち50件のうち35件は+23pipsに届く前に自分で閉じており、平均は+6.9pipsでした。指値に任せた15件は+23pips以上です。平均勝ちが+11.9pipsしかない主因は、この手仕舞いです。

ただし「持っていれば+25pipsに届いていた」証拠はありません。逆に損切りに刈られていた可能性も同じだけあります。断定できないので、夜モードでは決済ごとに利確pipsを記録し、30件たまった時点で平均を見て判断することにしました。

エントリーの質は損益では測れない

最後に、エントリーが良くなっているかを何で確認するかです。金額ではありません。

追う数字 = 逆指値を置けた回数 ÷ 全トレード
損益ではなく執行率を見る。100%を維持できていれば、エントリーの巧拙にかかわらず1回の負けは設計値に収まります。

金額を目標にすると、届かせるためにロットと回数を上げる動機が生まれます。それがまさに7月30日(15回・-4,532円8月4日(逆指値を入れずに46時間放置)の壊れ方でした。

エントリーの上達とは何か

勝率を上げることではありませんでした。実践記録①では勝率70%で-6,014円です。当たっている割合はすでに十分でした。

変えるべきだったのは、入る前に3つを決め、注文として置いてから入るという手順のほうです。エントリーの質とは、チャートの読みの鋭さではなく手順を毎回同じにできる率のことでした。

まとめ

  • 78トレードの集計で明確にプラスだったのは22〜24時に入り0時までに閉じた28回(勝率85.7%・+3,358円だけ。それ以外の50回は勝率52.0%・-14,476円
  • 21時台までのエントリー25件は勝率48%・-2,115円入る時刻を変えるだけで結果が変わる
  • ただし28件では確定した強みと呼べない。「推奨の営業時間」という扱いにとどめる。
  • 22〜24時が良いのはロンドンとニューヨークが重なり参加者が最も多いから。FXには出来高が無いので、参加者の多さを知る手がかりは時計しかない。
  • 入る場所の根拠は2つだけ。①直近の高値・安値(水平線)②キリ番(50銭・1円刻み)。板が無い以上、材料は価格しかない。
  • ブレイク狙いは抜けた足が確定するまで待つ。キリ番に損切りが溜まっている分、騙しは株より頻繁。
  • 入る前に決める順番は①損切りの場所 →②通貨数 →③利確。逆にすると必ずロットが膨らむ。
  • 暗算式は通貨数÷100=1pipsあたりの損益。資金5万円・25pips損切りなら4,000通貨で-1,000円(2%)。
  • 決済注文はエントリーと同時に置く。損失の全額は逆指値の無い5件(-13,157円)から出ていた。うち2件は15分で-60pips、画面を見ていても手動では間に合わなかった。
  • 入らない場面を決める方が効く。根拠が言葉にできない/負けた直後/指標直前/0時以降/仕事の合間
  • 追う数字は損益ではなく逆指値を置けた率。金額を目標にするとロットと回数が上がる。
FX実践記録②|78回中5回のミスで-11,118円になった話

※ 本記事の数値は筆者個人の取引記録(累計78トレード)を集計したもので、将来の成績を示すものではありません。サンプル数が限られるため、統計的に確定した優位性を示すものではない点にご留意ください。取引時間・注文方法・レバレッジ上限は証券会社や制度改正により変わります。本記事は特定の投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。