FXとは?株との違いを初心者向けにわかりやすく解説

結論:ロスカットは100%では発動しない

先に結論から書きます。

この記事の要点

①強制ロスカットの水準は「維持率100%」ではない。多くの国内業者は50%〜100%のあいだに設定していて、業者ごとに違います。100%を割った瞬間に決済されると思っていると、危険度を実際より大げさに見積もることになります。

②ロスカットまでの距離は計算で出せる。「あと何円」「あと何pips」という形で事前に分かります。感覚で怖がる必要はありません。

③そして実際には、ロスカットまでの距離はかなり遠い。資金を減らしているのは強制ロスカットではなく、たいていの場合自分で置いた損切りのほうです。

順番に確認していきます。

証拠金維持率の計算式

まず土台になる2つの式です。国内FXの個人口座はレバレッジ25倍が上限なので、必要証拠金は取引金額の25分の1になります。

必要証拠金 = 通貨数 × 為替レート ÷ 25
例:ドル円157円で4,000通貨 → 4,000 × 157 ÷ 25 = 25,120円
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
有効証拠金 = 口座の預り金 ± 保有ポジションの含み損益。含み損が増えると分子が減るので、維持率は下がります。

ここで大事なのは、含み損は「有効証拠金」を減らすだけでなく、為替レートが動けば「必要証拠金」も同時に変えるという点です。ドル円を売っていて価格が上がっていくと、分子は減り、分母は増えます。維持率は思ったより速く落ちます。

用語の呼び方は業者によって違う
有効証拠金は「実質保証金」「純資産」「有効証拠金額」など、業者ごとに呼び名が変わります。必要証拠金に対する余力の割合を見ているという中身は同じです。
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維持率の階段:どこで何が起きるか

維持率が下がっていくと、段階的にイベントが起きます。以下はSBI証券のFX口座の場合(2026年8月時点で公式のロスカット率ページを確認)です。

300%〜
余裕がある状態。多くの解説書が「初心者はここを目安に」と書く水準
100%
ここでは何も起きない。有効証拠金と必要証拠金がちょうど同額になっただけ
70%
マージンコール。追加入金またはポジションの決済を促す警告が届く
50%
強制ロスカット。全ポジションが自動的に決済される
必ず自分の口座で確認すること
ロスカット水準は業者ごとに違います。50%の業者もあれば100%の業者もあり、コース選択で変えられる業者もあります。SBI証券のFX口座では個人はロスカット率を変更できません(50%固定)。まず自分の口座の数字を確認してください。この記事の以降の計算はすべてロスカット50%を前提にしています。

あと何円でロスカットされるのか

いちばん知りたいのはここだと思います。口座5万円・ドル円157円・ロスカット50%で、通貨数ごとに計算しました。ポジションを持った直後の維持率と、そこから逆行してロスカットされるまでの距離です。

通貨数必要証拠金建てた直後の維持率ロスカットまで
1,000通貨6,280円796%45.9円(4,594pips)
2,000通貨12,560円398%21.4円(2,143pips)
2,500通貨15,700円319%16.5円(1,653pips)
4,000通貨25,120円199%9.2円(918pips)
5,000通貨31,400円159%6.7円(673pips)
8,000通貨50,240円99%3.1円(305pips)

この表の読み方でいちばん重要なのは、いちばん下の行でも「あと3円」あるという点です。口座資金の全額を証拠金として使い切る(維持率99%)ような無茶なサイズでさえ、ロスカットまでは305pips離れています。

ドル円の1日の値幅は、実データで中央値96pips・平均120pips程度です(ボラティリティの記事で詳しく扱っています)。つまり、常識的なサイズであればロスカットは1日の値動きで届く距離にはありません

実例:維持率125.7%まで落としたとき

実際に維持率を落としたときの数字を出します。FX実践記録②で書いた期間の、2026年8月4日の話です。

2026年8月4日 朝5時30分時点

・ポジション:ドル円 売5,000通貨(深夜0時に建てて、逆指値を入れずに寝た)

・含み損:-5,180円まで拡大

・有効証拠金 39,649円 ÷ 必要証拠金 31,545円維持率125.7%

当時これを見て「もうロスカット寸前だ」と思いました。100%を割ったら強制決済されると勘違いしていたからです。実際に計算するとこうなります。

到達点そこまでの逆行幅何が起きるか
維持率100%1.56円(156pips)何も起きない
維持率70%3.42円(342pips)マージンコール(警告)
維持率50%4.68円(468pips)強制ロスカット

この期間に実際に動いたのは1.04円でした。体感では「危なかった」ですが、強制決済までは4.5倍の距離が残っていたことになります。

それでも、これは危ない状態だった
距離があったから安全だった、という話ではありません。このポジションは最終的に-4,484円で決済しています。逆指値を入れずに寝たせいで、損失の大きさを自分で決められない状態を46時間続けたのが問題でした。危険なのはロットの大きさそのものではなく、「大きいまま放置する」という組み合わせです。

マージンコールと追証の違い

この2つは混同されがちですが、別のものです。

マージンコール追証(追加証拠金)
タイミング維持率が警告水準を割ったとき(リアルタイム)判定時刻に不足が確定したとき(多くは日次)
中身お知らせ。入金か決済を促される入金義務。期限までに入れないと強制決済される
放置すると維持率がさらに下がればロスカット期限到来で全ポジション強制決済
制度の有無ほぼすべての業者にある業者による。ロスカットのみで追証制度を持たない業者もある

デイトレのようにその日のうちに決済するスタイルであれば、実務上ぶつかるのはマージンコールとロスカットのほうです。追証はポジションを持ち越したときに関係してきます。

ロスカットされても借金は残りうる

ここは誤解が多いところなので、はっきり書きます。

国内業者は「追証なし」を保証していない
海外業者が宣伝する「ゼロカット」(口座残高を超える損失を業者が負担する仕組み)は、国内の金融庁登録業者では提供されていません。相場が飛んでロスカットが間に合わなかった場合、口座残高を超えたマイナス分は利用者に請求されます

実際に問題になるのは、週明けの窓開け重要指標の発表直後です。価格が飛ぶとロスカット注文が意図した水準で約定せず、はるかに悪い価格で決済されることがあります。これが「ロスカットがあるから最悪でも口座がゼロになるだけ」という理解が成立しない理由です。

ポジションを週末や指標をまたいで持ち越すときだけは、ロスカットを最後の砦として当てにしない方がいい、ということになります。

実は、ロスカットは現実的な脅威ではない

ここまでの数字を並べると、当初の警戒が見当違いだったことが分かります。実際の取引記録78件を集計した結果はこうでした。

距離・金額
4,000通貨でのロスカットまでの距離918pips
1か月で実際に動いた値幅400pips
最大の負けトレード1件-2,641円(約66pips)
78件の合計-11,118円(-152.3pips)

最大の負けでも66pips。ロスカットまでの距離の14分の1です。そして78件の合計損失-11,118円のうち、-30pipsを超えた大きな負け5件だけで-13,157円を占めていました。残り73件は合計でプラスです。

結論

口座を減らしていたのは強制ロスカットではなく、自分の裁量で置いた(あるいは置かなかった)損切りでした。

ロスカットを警戒して小さく張ること自体は間違いではありません。ただ、警戒する場所が1つずれていたということです。見るべきは業者が決済してくる水準ではなく、自分がどこで損切りを置き、それを実際に執行できているかでした。

では維持率は何のために見るのか

「ロスカットが遠いなら維持率は無視していいのか」というと、そうではありません。目的が違います

誤った目的本当の目的
維持率300%を保つロスカットを避けるため1回の損失額を資金の2%以内に収めるため

具体的に見ます。資金5万円で4,000通貨を持つと、1pips=40円です(覚え方:通貨数 ÷ 100 = 1pipsあたりの損益)。ここで25pipsの損切りを置くと-1,000円、資金の2.5%になります。資金管理の2%ルールを超えています。

つまり維持率が薄いということは、1回の損切りが資金に対して重すぎるということです。ロスカットまでの距離ではなく、こちらが本当の制約になります。

通貨数 = 資金 × 2% ÷ 損切り幅(pips) × 100
例:資金5万円・損切り25pips → 50,000 × 0.02 ÷ 25 × 100 = 4,000通貨…ではなく、1,000円 ÷ (25 × 0.01円) = 4,000通貨。この式で出した数量なら、維持率は自動的に必要な水準に収まります。
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損切り幅と許容リスクを入れると適正な取引数量を逆算。必要証拠金と証拠金維持率も同時に表示します

ロスカットされないための3つ

① 建てる前に必要証拠金を計算する

「口座の何割を1つのポジションで拘束するか」を先に知っておくことです。資金5万円で4,000通貨なら必要証拠金は25,120円口座の約半分を1ポジションで使います。この状態で2つ目を建てれば、維持率は単純に半分になります。

同時に持つポジション数も維持率で決まる
維持率200%のポジションを2つ持てば維持率は約100%、3つ持てば約67%でマージンコール圏です。1ポジションあたりの維持率 ÷ ポジション数がおおよその実際の維持率になります。

② 逆指値を必ず置く(これが本丸)

ロスカットは「業者が決めた場所での決済」です。逆指値は「自分が決めた場所での決済」です。自分で決めた場所のほうが必ず手前にあるので、逆指値が機能している限りロスカットには到達しません。前述の8月4日の失敗は、この逆指値を置かずに寝たことが原因でした。逆指値をエントリーと同時に置く手順はFXのエントリーの決め方で扱っています。

③ 持ち越すときはサイズを落とす

デイトレのように監視できる時間帯と、寝ているあいだや週末では、同じサイズでも意味が違います。見ていない時間は逆指値以外に防御手段がないので、飛ぶリスクのある局面(週末・指標)はサイズを落とすか、そもそも持ち越さない方が安全です。

株の信用取引との違い
株の信用取引もレバレッジは最大約3.3倍で、追証の仕組みがあります。FXは25倍なので、同じ「維持率」という言葉でも動く速度がまったく違います。株の感覚をそのまま持ち込まないことが大切です(株のテクニカル分析はFXで使えるかでも触れています)。

まとめ

  • 維持率100%はロスカット水準ではない。有効証拠金と必要証拠金が同額になっただけで、何も起きない。
  • ロスカット水準は業者ごとに違う(50%〜100%が中心)。SBI証券のFX口座は50%固定で個人は変更できない(2026年8月時点)。まず自分の口座で確認する。
  • 計算式は2つだけ。必要証拠金=通貨数×レート÷25維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
  • ロスカットまでの距離は事前に計算できる。口座5万円・ドル円157円なら、4,000通貨で918pips、5,000通貨でも673pips離れている。
  • ドル円の1日の値幅は中央値96pips。常識的なサイズなら、ロスカットは1日の値動きで届く距離にはない。
  • 実例では維持率125.7%まで落ちたが、強制ロスカットまではまだ4.68円(468pips)あった。「100%でロスカット」という勘違いが、危険度の見積もりを狂わせていた。
  • マージンコールは警告、追証は入金義務。追証制度の有無は業者による。
  • 国内業者はゼロカットを提供していない。窓開けや指標でロスカットが間に合わなければ、口座残高を超える損失は請求される。
  • 78件の記録では、資金を減らしていたのは強制ロスカットではなく自分の損切りだった。最大の負けでも66pipsで、ロスカット距離の14分の1。
  • 維持率を高く保つ目的は、ロスカット回避ではなく1回の損失額を資金の2%以内に収めること
  • 実務でやることは3つ。建てる前に必要証拠金を計算する/逆指値を必ず置く/持ち越すときはサイズを落とす
FX実践記録②|78回中5回のミスで-11,118円になった話

※ ロスカット水準・マージンコール水準・追証制度・レバレッジ上限は、証券会社や制度改正により変わります。本記事に記載した具体的な水準は2026年8月時点で確認したものです。実際の取引条件は必ずご利用の会社の公式情報をご確認ください。本記事は特定の投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。